ホロラボ取締役COO、武仙です。新たな経営体制を敷いたホロラボの経営メンバーが日替わりで書く Advent Calendar 。
いよいよ大詰めな今回のテーマは「選ばれるパートナーとして(共創)」です。
パートナーの皆さまと共に成長してきた8年
ホロラボはこの約8年間、実にたくさんのお客様やパートナーに恵まれて成長をしてきました。 XRという夢のある技術をテーマにしたことで同じようにこの技術の可能性に関心を持つお客様と、産業を問わず様々な取り組みが出来ました。
中でも、ホロラボの視点では以下の3つの分野において業界の進む方向性でXRのニーズが高かったように思われます。
建設業 ~ BIM導入の流れで効果的な可視化の手段として youtu.be
製造業 ~ 工場、現場DXのインターフェースとして youtu.be
通信業 ~ 5Gとその先の新しい体験メディアとして youtu.be
※どのような業界のお客様との取組があったのかの詳細は取締役の岩崎さんが書いた「ホロラボの顧客について」も合わせてご参照ください。 blog.hololab.co.jp
これらの取り組みを含めて共通することとしては、大半がInbound ~ お客様からのお問い合わせからスタートするケース。「ホロラボさんで、こんなことをお願いできますか?」と言ったかたちで、XR技術やデジタル3D関連の技術調査、PoC開発などのご相談、ご依頼を頂くケースが多かった点です。
また取り組みの内容についても、具体的な取り組みの仕様は決まっておらず、不確実かつ自由度の高いお話しが多かったように記憶しています。社内(というか自分の周り)では「フワっとした話」と表現していましたが、得たい成果や使いたい技術、進みたい方向性だけがある程度先に決まっている一方で、その取り組みの具体な中身は一緒に打ち合わせや提案資料などのコミュニケーションを通じて具体化したり、仮説を立てつつも技術調査や開発も同時に進める実験的かつ探索的な取り組みもありました。
このプロジェクト立ち上げや最中のプロセスの中では逆にお客様からXRに対する熱い思いを聞かされることも多く、同種技術のファンの方々に頼りにして頂けていたように感じています。また、その過程でお客様の現場や業界の課題や展望について詳しくお話を伺う機会や、実際に建設現場や工場の中など普段立ち入れない現場をご案内頂いたりもあって、頼りにしていただいてるなと身が引き締まる思いになることも多々ありました。
自分の前職が電子部品の商社だったんですが、当時のお客様と言えば事務的で時として高圧的な印象がありました。競争の激しい商材をどのルートから調 達するか。1円でも安く仕入れるには、、、と言ったギリギリのやり取りが多く、その関係性は「お客と出入り業者」としてのゼロサムな関係の中で如何に価値を相手からむしり取るか、といった対立軸があったように思います。
一方でホロラボでお会いするお客様は何かこの新しい技術を一緒に試そう、可能性を探索しよう、と言ったワクワクするようなモチベーションを持って接して頂いてるように感じて、対照的だなといつも感じていました。そしてホロラボのスタッフのみんなはそれこそ息を吸うように目まぐるしく進化する技術を楽しみながら使いこなして、自らの発見と知見をコミュニティの場やSNSなどで情報発信をして、それぞれでお客様の期待に応えてきたと言えます。
本来は価値の交換が商取引の基本ですが、XR技術に対する熱意がそこに介在することで交換以上の強い関係性が実現することもあったように思われます。 そして、そういった取り組みを通じて大きな成果を上げて、しいてはプロジェクトの成功から継続拡大して予算が大きく増えたり、また個人の評価や昇進に繋がったりと言ったこともありました。
課題「PoC死」
そういったXRファンとも言えるお客様との相補的な取り組みが数多く生まれる中での一番の課題は「PoC死」でした。
※Microsoft Copilot Designerによる「XR絶望の谷」のイメージw
お客様の事業課題は様々にあり、それらに対してXRや3Dデジタル関連の技術での解決が企画されました。そのために実証すべき概念は大量にあり検証環境をホロラボで開発、構築をすることが多くありましたが、「時期尚早」といった結果となるのが大多数でした。
理由は様々ですが、かなり乱暴に大別すると直接的な原因としては「XRデバイスの性能不足」と「データやコンテンツのコスト」の2つで、更にその裏側にあるのが「XRに対するユーザーリテラシー不足」があると考えています。
PoC死の原因1: XRデバイスの性能不足
2016年に初代HoloLensがリリースされたタイミングで世界中がこの新しいオーパーツに熱狂して様々な応用が検討されて、たくさんのPVが制作されました。当初Microsoftは初代ハードウェア自体を未来的なデザインにして、PVも室内でスタイリッシュに空間に浮かぶディスプレイや3DCGとインタラクションしつつデザインやデスクワークをする姿が描かれました。
その後のMicrosoftのHoloLensのPVや販売戦略ではFirst Line Workerと言う言葉が使われて、現場にいて作業をしてる方々向けにICTによる業務改善を提案する方向性にピボットしました。
現場の最前線で活躍されている従業員(ファーストラインワーカー)は、世界に 25 億人、日本には 4,000 万人いらっしゃると言われており、日本では、働き手が年々減少する中でも、引き続き大きな割合を占める、ファーストラインワーカーの皆さまの働き方改革の推進が急務となっています。
※引用元: 「現場の最前線で活躍する従業員(ファーストラインワーカー)の働き方改革をご支援する取り組みを開始」 ~ 日本マイクロソフトニュース (2019年4月19日) news.microsoft.com
そして、結果として2019年2月発表のHoloLens 2のハードウェアは直線的でかつ機能的、シンプルに変わりました。
若干私感ではありますが、当初想定していたデザインワークなどではハードウェアの視野角や色再現性など質感を表現するには不十分で、インタラクションも身体性を実現するにはまだ未熟。かつコンピューティングパワーの不足により表示できるコンテンツに制限が出たり心地よいマルチタスキングが難しかったり。また、等のオフィスワークやデザインワークなどは日々新しいサービスなどがPCやモバイルデバイス向けに出ていて置き換えるモチベーションも高くない、と言ったの決定的なPoC死の要因が早々に明らかになったと見てます。
一方でFirst Line Workerの課題やニーズはそれぞれの業界でクリティカルで、この新しい技術を使って完全ではないにしても革新に取り組む強い理由があり、投資対効果の成り立つ部分も出て来たために普及が進むことになったと考えています。
PoC死の原因2: データやコンテンツのコスト
次にもうひとつ直接的な原因となったのがデータやコンテンツのコストです。XR技術の真価を発揮するためには大量の3Dモデルが必要とも言えそうですが、その制作コストやノウハウがお客様にはないケースが多く、大半を外注したりでコストがかかりがちでした。また納品されたCGもお客様の環境では活用するためのソフトが無かったりで確認もきちんととれなかったり。
それでもPoCで掲げた概念を可視化するためにPV向けには気合をいれた一品もののCGを準備出来て大いに注目を集めたものの実際のプロジェクトで運用していくに際してはコストが捻出できない、みたいな話が結構ありました。結果的に予算が折り合わずに写真や動画素材を並べたARを実施したりと言った話も出てきていました。(既存情報資産の利用と言う観点では2Dコンテンツに対しても否定的ではないですが、やむなくそうなったケースも多かったのでw)
PoC死の原因3: XRに対するユーザーリテラシーの不足
デジタルの3Dオブジェクトをジェスチャーやコントローラーで移動、拡縮など空間で自在に扱う体験は、まさに自分が魔法使いになったかのように楽しいものです。ただ、はじめて体験する人はそうはいきません。XR初体験の場合には6軸自由度で動けるのに被ったままで動けなくなる方も多く、よく「ぜひ近づいてみてください」などとガイドをして移動を促したりしました。
一部の好奇心の強い方が操作にチャレンジをしても、どのように操作していいのかがなかなか分からずにイライラさせてしまうときもありました。操作方法をガイドするためにチュートリアルを準備するなどで対応しましたが、それはそれで制作コストにインパクトが出たり。最近体験コンテンツの企画などに際して、体験人数や場所の制約などを考えて最初からユーザーにインタラクションさせずに見ることに専念してもらう体験設計なども良く行いました。
我々はコンピューターと触れ合う際に、マウスやキーボードに慣れています。モバイル機器が普及してからはタッチUIに慣れていて、新しいアプリが出ても初見である程度の操作が出来るし、アイコンも共通化されたものが多く何となくの動作の想像がつきます。これがユーザーリテラシーだと思いますが、それに相当するものがXRや空間コンピューティングにはまだ足りてないと言えます。そしてこの課題は前の2つと違って技術革新だけでは解決しないもので、ある程度のユーザー数が日常的に使うことと、横断的なUXデザインが行われて、更にベストプラクティスの共有と淘汰が行われて、、、といった長くかかる戦いだと考えています。
※この辺の話はめっちゃ面白くてアツい話です。関心のある人は以下も合わせて読んでみてください。 blog.hololab.co.jp
時代の波に乗って、PoCのその先へ
そういった取り組みの中でも、様々なバランスのもとでPilotやDeployと言った実施フェーズへと移り事業化された取り組みも生まれて、そういったお客様の事業とともにホロラボの事業も、またそれを担当するチームも大きく成長しました。そしてその比率が年々上がってきているように思います。
「XRデバイスの性能」についてはこの8年で劇的な進化を遂げています。特にMeta Quest 3/3Sのコストパフォーマンス性やApple Vision Proが実現する卓越した体験。XREAL Air 2などカジュアルな用途を目指したものや、QONOQ MiRZAのような無線接続という挑戦的なものまで、多様な特徴を持ったデバイスプラットフォームが互いに競争し合いながら市場を盛り上げています。
「データやコンテンツのコスト」も、3Dスキャンなど技術革新で制作ハードルが下がっていますし、エンタープライズではCAD/BIMの3D化の流れでベースとしては一般化しつつあると言えそうです。Project PLATEAUにおいては200都市もの市街地のデータがオープンデータとして無料で提供されたり、生成AIが任意の3Dモデルをスクリプトから適切な品質で制作してくれる将来も身近になって来ています。
XR技術大好き集団にご期待を頂いて今までご一緒に取り組んできたパートナーの皆さんと一緒に、PoCの絶望の谷を超えて次の社会実装のフェーズへと取り組む土台が整ってきていると感じています。そして、ホロラボはXR技術のみならず、コンサルテーション、システム開発、AI関連開発、データ作成、ハードウェア流通など、XR技術に留まらない様々なサービスをワンストップで提供出来るようになってます。
チームで早く遠くへ行く
ホロラボが新しく策定したValueがこちらです。今後、ホロラボのメンバーがこれを指針にして日々行動していきます。
今日はここに注目。
チームで早く遠くへ行く
個の力を結集し、協力し合うことで、より早く、より遠くまで到達し、最高の成果を追求します。
通常のことわざは「早く行きたければ、一人で進め。遠くまで行きたければ、みんなで進め」らしいですが、ホロラボの場合には欲張って両方をValueに掲げました。これ、基本は今後チーム戦で大きくやっていこうという社内向けの話ではありますが、そもそもお客様とはお互いを補い合うチームとして長らく挑戦を共にして成長した経緯がありました。
お客様との関係において今までは様々な要因からPoCで終わってしまう「早く」だけが多くなっていたのかもしれませんが、前述の通りで色々と条件が揃ってきています。
ホロラボはぜひこの挑戦を、今までのお客様も、これから出会うお客様とも、熱意を共有してご一緒に取り組みたい。 様々なお客様の課題解決に選ばれるパートナーとして、チームで早く遠くへ行きたい。
そう考えています。
最後に
ホロラボがどんな挑戦をしようとしてるか気になる方は、ぜひお気軽にお問合せください!
https://hololab.co.jp/#contact
また、このチームで早く遠くへ行く挑戦をお客様との最前線で取り組むエンタープライズセールスを担当する方も大募集!ご関心の方はぜひご応募ください!
https://hololab.co.jp/recruit/es
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そして、ホロラボAdvent Callenderも明日と明後日の2回で終わり! トリ前の明日は、、、取締役の岩崎さんより「上場に向けた取り組み」です!!大注目!!