ブログ@HoloLabInc

株式会社ホロラボのブログです

空間コンピューティングによるDXの期待と現実

こんにちは。ホロラボの執行役員 / 新規事業開発部長 久保山です。 本日はホロラボ Advent Calendar 2024の13日目。

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前回に引き続き、 「空間コンピューティングとDX」 という壮大なテーマについて考えていることを書く、というチャレンジ中です。

「空間コンピューティングとDX」

  1. ホロラボはどんな業界のどんな位置にいる会社? [12/6公開]
  2. 空間コンピューティングをDXに活用するには? [12/13公開。本記事]
  3. 今後の新規事業をどう考えてどう取り組む? [12/19公開予定]

この連載の背景である「これまでホロラボはどんなところで、どういう仕事をしてきたのか」、「今、何を問われているのか」については前回の記事をご参照ください(「筆者の簡単な自己紹介」や「空間コンピューティング、DXという言葉をどういう意味で使うつもりか」も書いてあります)。

本日はいよいよ「空間コンピューティングをDXに活用するには?」について、私の経験から仮説を描きたいと思います。一言にDXと言っても、業種や職種、規模や内容など多岐に渡るため、この記事では「空間コンピューティングを活用したDXにはどんな期待があるのか」、「実際に企画する場合に何を考える必要があるのか」についてまとめます。 具体的なホロラボの事例については、当ブログの他の記事、弊社カンファレンスのアーカイブPR TIMESの記事などにありますので、そちらを参照ください。

この記事をきっかけに空間コンピューティングやDXについてディスカッションができると幸いです。

空間コンピューティングのDXへの期待

空間コンピューティングの特徴に、「フィジカル(身体的/物理的)空間にデータを紐づけて利用することができる」 というものがあります。例えば、「特定の場所に行くと、その場所にまつわる映像が流れる」とか、「ある機械を見ると、その機械のマニュアルが表示される」などです。この「空間とデータの紐付け」が「新しい業務フローが実現できて生産性が上がる」、「新しい体験を通じてお客様に価値を感じてもらう」などの実現に寄与できる可能性があります。

特に、現場作業を伴う「ノンデスクワークのDX」への期待があります。 現在、DXに寄与する様々なソリューションは、デスクワークの効率化が圧倒的に数が多いです。一方で多くの企業にとって、事業のコアとなる業務は現場業務です。その現場業務を大幅に改善したり、これまでとは異なる業務フローを構築したりすることで生産性を向上させることが、労働人口が減っている現在、緊急かつ重要な課題になっています。

労働人口減少に対してはロボティクスなどの技術開発も進んでいます。ただ、フィジカル空間はそのスペースに限りがあるため、機械が設置できなかったり、通路を通らなかったりとその全てにロボットを適用することは叶いません。コスト面も含め、人が担わなければならない部分はまだまだ沢山あります。そこに空間コンピューティング技術を活用することで、人の作業が大幅に軽減されたり、経験の浅い人でも成果が出せるようになったりすることが期待されています。

3Dデータが得意なこと

空間コンピューティングで利用されるデータの一つとして「3Dデータ」があります。ホロラボは3Dデータ活用のご相談をよくいただくので、「3Dデータ利用が向いていることは何か」を整理しておきたいと思います。まず、数年前から現在まで、XR技術のユースケースは、ゲームやエンターテイメントを除くと、以下の3つが主流です。

  • プレゼンテーション
  • トレーニング
  • ガイド

なぜ、これらのユースケースが主流なのかを私なりに解釈すると、3Dデータは以下の3つが得意だからだと考えています。

  • 「立体物」の認識・理解を支援・促進する
  • 「立体的な動き」の認識・理解を支援・促進する
  • 「空間」の認識・理解を支援・促進する

例えば、2D図面に比べて3Dモデルであれば図面を読むことができない人でも、どんな形や大きさの立体物なのかを直感的に知ることができます。それが建物であれば、その建物にはどんな広さ・形をした部屋があって、どこに何があるのかが分かり易いでしょう。また、紙に書かれた手順書に比べて3Dアニメーションであれば、どのような手順で機械を操作すればいいのか直感的に分かりますし、手を回したり後ろに移動したりするような作業であっても視点を変えながら確認することも可能です。

これらの”わかりやすさ”は、背景となる知識や経験の異なる人の間で特に効果を発揮します。

  • 図面を読める人/読めない人
  • その操作をやったことある人/やったことがない人
  • その場所をよく知っている人/知らない人

空間コンピューティングをDX活用しようとすると、大体「3Dデータを使う」という選択肢が入っていますので、上記の特徴を考えながら、本当に3Dデータ活用が適しているかを考えるようにしています。

運用・メンテナンスのしやすさを考える

DXを進めるには「本当に投資対効果があるのか?」という問いを考える必要があります。特に新しい技術の活用は実現性も含めて未知数な部分も少なくないため、過剰なコストをかける訳にはいきません。そこで、小さな技術検証からスタートするのですが、検証コストだけを考えて進めると、その後の運用・メンテナンスコストの検討が後回しになり、検証が終わる頃に「運用・メンテナンス費が予算と合わない」となってお蔵入り・・・なんてことも少なくありません。

運用・メンテナンスを試算するためのPoCから始められれば良いのですが、最近は以前に比べて「早く現場で活用できる状態にしたい」と短期間で成果を求められる傾向が強くなっているように感じます。正直、検証前の企画段階で正確に運用・メンテナンス費用を見積もることは不可能です。

そのため、企画段階では、将来の理想的な未来は描きつつも、以下の2つの点を検討します。

  1.(改善したい業務フローや提供したい体験が一通り回る)本当の意味での最低限の機能はどれか?

  2.利用するデータをどこまで作り込む必要があるか?

その企画がどこまで成果が出て、どれくらい価値を生むかは最終的にはやってみないと分かりません。ただ、そこにかけるコストが過剰にならないため工夫は企画段階でできます。

1.本当の意味での最低限の機能はどれか?

空間コンピューティングに限った話ではなく、全てのシステム開発に通じることですが、機能は作れば作るほど、開発コストもその後のメンテナンスコストも上がっていきます。後から必要のないと分かった機能を減らすのもコストがかかりますし、機能が増えてシステムの複雑さが増すほど、その後の機能追加のコストが高くなります。成果がどこまで出るかやってみないと分からない以上、検証できる最低限の機能を考え、小さく始めて検証する必要があります。作り始める前に、この検討にちゃんと時間をかけることが大切です。

2.利用するデータをどこまで作り込む必要があるか?

運用・メンテナンスの費用には、データの追加・更新の影響がかなり大きなウェイトを占めることが多いです。例として、3Dデータをイメージするとわかりやすいと思います。

詳細な3Dデータを作ろうとするほど、それを作成するにはコストがかかります。例えば、何か機械を表現するのに、大きさがわかる程度の四角い箱を作るのか、機械の形状が判別できるくらいで作るのか、部品一つ一つを判別できるくらい作るのか等です。

より詳細なデータを作るほどデータ容量が大きく重たくなりますので、それらを表示したり、操作したりするためのデバイスはより高性能なものが必要になります。3Dデータの詳細度が高い場合、普段業務で使っているPCでは表示ができず、専用の高性能PCを準備しないといけないかもしれません。

作成した3Dデータを修正する際は、詳細であるほど修正にコストがかかりますし、専門的な知識が必要になります。結果、データの更新のしやすさは、詳細度が高いほど難しく、詳細度が低いほど相対的に簡単になります。そのため3Dデータの作成・管理を内製化をしたい場合、詳細度が高いほど難しくなります。

空間コンピューティングの活用を企画する際、SF映画のような高精細でリッチな体験を描きたくなる気持ちはとても共感できますし、そんなワクワクする世界を作りたいとも思っています。ただ、DXの実現には「運用」は欠かせません。そして、その運用は「いつかできるようになる」ではなく「実装後に運用できるか」という視点で考える必要があります。まずは小さく運用を始められるように、最低限必要なデータはどんなデータなのかを企画段階で考えることが必要です。

「空間の範囲」と「データの紐付け単位」という視点

ここから更に、空間にデータを紐づけるという空間コンピューティングの特徴をどう活かすかを考えていきます。

空間コンピューティング活用を考える手かがりとして、次の2つの切り口を整理しておくと、過剰投資にならずに企画・検証がしやすくなると考えています。それは 「空間の範囲」と「データの紐付け単位」 です。

(1)空間の範囲

まず、 「改善したい業務、作りたい体験は、どんなフィジカル空間の範囲で実施・管理されているか」 を考えます。部屋の中なのか、フロアなのか、建物なのか、街なのか、国なのか・・・です。空間コンピューティングを活用するには、適切な空間の範囲があります。

地図をイメージしてもらうと考えやすいと思います。隣町のコンビニに行くのに、日本地図を用意してもたどり着けません。一方、全国の配送網を考えるのに、街の地図があっても把握できません。広すぎず、狭すぎず、適切な空間の範囲を設定します。

この時、「後々のことを考えて最大まで広くしておこう」とか「広い範囲も狭い範囲も一つでできるように全部」と考えたくなりますが、この考え方は要注意です。先ほど述べたように、データを作り込むほど作成コストも運用コストも上がっていきます。まずはDXしたい業務や体験に最低限必要な空間の範囲を絞りましょう。

(2)データの紐付け単位

次に 「業務・体験に必要なデータは、空間内のどの単位で紐づける必要があるか」 を考えます。

例えば工場の場合。「この部屋で最近起こったヒヤリハット事例」というデータの場合は、紐付ける空間の単位は部屋で良いかもしれません。「特定の機械のマニュアルや注意事項」というデータの場合は、設置されている機械単位で情報の紐付けが必要そうです。「機械に使われている部品のスペア品の在庫」という情報の場合は、もしかしたら機械の部品単位で情報が紐づくことを求められるかもしれませんし、機械単位で紐づいていれば十分かもしれません。

このように、活用したいデータはどの単位で空間に紐づけておくと有用かを整理しておきます。この時、より細かい単位で紐付けようとすれば、その分紐付けの手間がかかります。ここでも「後々のことを考えて、ともかく細かく管理しよう」としてしまうと、紐付けの準備のコストも追加・更新コストもかかるので要注意です。

空間コンピューティングの特徴を活かしたDXの実現には、これら「空間の範囲」と「データの紐付け単位」という切り口で検討・整理することが手がかりになると、様々なお客様とのやりとりで辿り着きました。

空間コンピューティングのDX活用を考える手がかり

この記事のまとめです。

  • 「フィジカル空間にデータを紐づけて利用することができる」ことがDXに寄与する可能性がある。特に現場作業が伴う「ノンデスクワークのDX」への期待がある
  • 3Dデータは、「立体物」、「立体的な動き」、「空間」の認識・理解を支援・促進するのが得意。特に背景となる知識や経験の異なる人の間で効果を発揮する
  • DX実現には実装後の運用も考える必要がある。ただし企画段階から正確な運用見積は不可能
  • 新しい技術の活用の成果は、最終的にはやってみないと分からない
  • 過剰にコストをかけずに検証するための工夫は企画段階でできる
    • 本当に必要最低限な機能は何か?
    • データをどこまで作り込む必要があるか?
    • 業務・体験が実施・管理される空間の範囲はどれくらいか?
    • データの空間への紐付けはどの単位で必要か?

そもそもDX自体がそんなに簡単な話ではない中で、さらに空間コンピューティングという新しい技術を活用するとなると、一人や一社の力だけでは足りません。改善したい業務や作りたい体験については、当事者である皆様が詳しいでしょうし、空間コンピューティングなどの技術については弊社が詳しい。それらを掛け合わせ、議論し、この記事で提示したような視点を整理することで、過剰なコストをかけず、運用を意識した企画・検証ができると考えています。

ホロラボでは作るものが決まっている開発案件だけではなく、「何をするか/それをどう実現するか」を考えるような企画フェーズからの伴奏支援も行っております。考えていること、悩んでいることなどがございましたら、ホロラボのお問い合わせフォームからお気軽にお問い合わせ・ご相談ください。 (本記事を見たと一言添えてあれば初回面談に私もぜひ同席させていただきたいなと思います)

また、ホロラボでは現在、「エンタープライズセールス組織」を立ち上げる仲間を募集しています。空間コンピューティングという新しい技術を活用して、大手企業のお客様とともに新しい価値づくりに挑戦しませんか?

募集ページ:エンタープライズセールス

次は

次回で私の記事は最終回です。最後は「これからどのように新規事業を企画・検証していくつもりなのか」について書き出しておこうと思います。私の記事の続きはまた来週に。

明日は及部さんによる「社員65人規模の会社におけるアジャイル開発のリアル」です。

ホロラボにおけるメタバース開発

ホロラボ Advent Calendar 2024、12日目は、執行役員 林が担当します。

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前回の記事は 2024/12/5

ホロラボの技術的な専門知識 とチームが使用するツールとプラットフォーム - ブログ@HoloLabInc

でした。

テーマは 「ホロラボにおける“メタバース”開発」です

皆さんは新幹線を利用しますか?

私は新幹線をよく利用します。

地方に住んでいるため、ホロラボ(東京/五反田)に出社する時は、基本的には新幹線を使います。

20代の頃から地方在住でありながら、関わるプロジェクトは東京メンバー主体であることが多く、毎週定例会議のために印刷した資料をたくさんカバンに入れて日帰りで往復していました。

新幹線のチケットは、金券ショップで購入した回数券を利用し、乗車前に自動券売機で座席を指定して発券していましたが、今はスマートフォンを利用してオンラインで、駅に向かいながら座席を予約したり、時間変更ができるので大変便利になったと思います。

ちなみに東海道新幹線の指定席の回数券は2022年に既に販売が終了し、自由席の回数券はまさに今月(2024年12月)に販売が終了するそうです。

以前から新幹線に乗っているときに実施していることがあります。

それは開発中のアプリケーションの動作検証です。

新幹線はモバイル通信の状態が不安定で、トンネルの中に入ると通信が途絶えたりします。

通信が切断がされ、思いがけないエラーが出たり、通信の遅さから、通常時とは異なる順番でコールバック(処理の呼び出し)が起きて、意図しない挙動をしたり、処理が遅くてボタンが反応せずイライラしたりします。

また、移動中はスマートフォンのテザリングを利用しているため、オフィスや自宅にいる時と違って、データ通信サイズも気になってしまいます。大きなデータ通信が伴うアプリケーションを利用すると心理的に不安になったり、利用を控えたりしてしまいます。(非機能要求)

新幹線に乗車時のような不安定な通信環境でも、ストレスなくアプリケーションが利用できたり、目的のタスク実行や娯楽の享受が達成できるか?ということも、大切な品質基準と考えています。

もちろん開発内容によって、公共の場での利用は控えたり、画面は暗くしたり下を向けて周囲から見られないようにしたり、細心の注意を払って実行しています。一方、Meta QuestやApple Vision Proなどは新幹線の中で利用していても、周りからディスプレイを覗かれることはないので安心です。周りから不思議な目で見られることもありますが、こちらはパススルー機能で「お見通し」です。

はい。では本題です。

ホロラボにおいて、いわゆる「メタバース」と関連するプロジェクトは多く、私もいくつか関わってきました。(※1)

メタバースという言葉はなかなか扱いが難しく、2023年頃にバズワードとして流行した後、大きく急すぎる期待に反して幻滅期に入りました。いわゆるオワコン扱いです。 しかし、メタバース は幻滅期を乗り越えて、これから始まるところです。

メタバースという言葉は、総務省の情報通信白書 令和6年版(※2) において、

メタバースとは、インターネット上に仮想的につくられた、いわばもう1つの世界であり、利用者は自分の代わりとなるアバターを操作し、他者と交流するものである。仮想空間でありながら、メタバース上で購入した商品が後日自宅に届くなど、現実世界と連動したサービスも試験的に始まっているほか、仮想的なワークスペースとしてBtoBでの活用への広がりも期待されている。

として定義/紹介されています。また、そのメタバースの市場規模は

2022年の461億ドルから2030年には5,078億ドルまで拡大すると予測されている

として着実に成長する分野(8年で11倍)であると予測がされています。

メタバースの中でもeコマース/ゲーム/ショッピングなどの消費者向け分野の成長が主に期待されているのですが、ホロラボが得意としている製造業/AEC業界など、ビジネス向け分野においてもメタバース・ワークプレイスや教育/セミナー/プレゼンテーション/設計レビュー/デジタルツイン連携の分野は期待されており、実際お声がけが多いです。

メタバースとデジタルツインの違い

メタバースと近い言葉で「デジタルツイン」というものもあります。

メタバースとデジタルツインの違いについては、同白書においては

メタバースとデジタルツインは、それらが存在する空間が仮想空間である点は共通であるが、その空間に存在するものが実在しているものを再現しているかどうかを問わないメタバースに対して、デジタルツインは、シミュレーションを行うためのソリューションという位置づけであるため、現実世界を再現している点が異なる。

として紹介されています。

ホロラボのMissionである 「フィジカルとデジタルをつなげ、新たな世界を創造する」はまさに、この実在する現実世界と仮想空間を組み合わせ、デジタルツインとメタバースの生み出す価値を追求するという事が、大きなテーマの一つです。

ホロラボでは、Webベースのデジタルツイン基盤システムである torinome(トライノーム) も開発しており、ちょうど、昨日の XR Kaigi Award 2024 の エンタープライズ部門 でアワードを受賞いたしました。

また、私自身のチームでは「ファクトリー メタバース」というコンセプトを掲げ、その中でどのような価値を提供できるかを、クライアントの皆様と模索/追及するプロジェクトをで進めています。

ファクトリーメタバース のコンセプト

  • ファクトリーメタバースは毎日PCやスマホのようにメタバースで仕事をする空間 メタバースプラットフォーム
  • 世界中どこにいてもヘッドセットを装着することで同じ仕事場に入ることができ、同じ仲間がいて、同じ仕事ができる。
  • 物理的に作る製品のライフサイクルに合わせて様々な用途での利用ができる。
  • 物理製品ができる前の企画・設計段階から、製品が販売され顧客の元に行き製品を価値を発揮している最中、最後は製品が役目を終えるまでデータとメタバースは製品の支援を行うことがでる。

それはホロラボの単発のソリューションだけではなく、継続包括的なプラットフォームとして、安全なデータ基盤と、その上で多彩なコミュニケーションを提供できるアプリケーションを提供することで、製造業の抱える課題やDXに価値を提供していくことを目指しています。

確かにそこにあるもの

このコンセプトを実現させるために、最近私自身が、注目しているのは、利用者がアクセスするその仮想/現実空間を「確かにそこにあるもの」として定着させる方法です。

その空間が、その利用者がアクセスされた時だけ再現されるのではなく、アクセスの有無にかかわらず、常に存在し変化するという事を実現することで、「確かにそこにあるもの」として実感させるにはどのような技術要素が必要かと考えると

  • 空間が元来保持している情報と、利用者の介入による変化情報の永続化/並列化
  • AIエージェントや現実のセンサーとの連携したコミュニケーションとフィードバック
  • 仮想空間/現実空間を連携させたコンテンツ作成支援環境
  • 空間への多彩なアクセス方法/ユーザーシナリオ

が必要になってくると考えています。

メタバースやデジタルツインというと、大きく未来的なものを思い浮かべてしまうかもしれませんが、実際の業務の中で使い、価値を生み出していくものと考えると、工場の中でも海外でも、新幹線での移動中でも自由にアクセスできるプラットフォームを目指していきたいと考えています。

スケールが大きく取り留めのない話ですが、大きなコンセプトと具体での現場での課題解決を行き来しながら、考え、そして実行していきたいと考えています🚄

以上

※1 ご紹介できるものとしては、NTTコノキュー社の新感覚街あそびARアプリ「XR City」に関してホロラボはサービス開発とコンテンツ開発をパートナーとしてプロトタイプ設計/初期開発に関わらせていただきました。

※2 総務省の情報通信白書 令和6年版 「特集② 進化するデジタルテクノロジーとの共生 /第2節 AIの進化に伴い発展するテクノロジー」

明日

明日は新規事業開発部 部長/執行役員の久保山さんが担当します。

お題は「空間コンピューティングによるDXの期待と現実」です!

ホロラボにおける製造業とXR

ホロラボ Advent Calendar 2024の11日目、事業推進部の岩崎です!

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今日は製造業におけるXRについて記載させていただきます。

はじめに日本における製造業

日本における製造業は「経済成長」「雇用」「技術革新」にとって欠かせない要素です。

  1. 経済の基盤
    • 日本のGDPの2割合を占めており、国内外での輸出活動を通じて経済を支えています。特に、自動車、電子機器、半導体などの分野は世界の中心に位置付けています。
  2. 雇用創出
    • 日本の労働市場で多くの雇用を提供しています。また地方経済においても製造業が主要な雇用主となり地域の発展を支えています。
  3. 輸出産業
    • 日本の主要な輸出産業であり、自動車、電子機器は国際市場で高い評価を得ており、日本の貿易収支を黒字に保つ重要な役割を果たしています。
  4. 技術革新
    • 特にロボット工学、精密機械、材料科学の分野での研究開発は、他国に先駆けたイノベーションを生み出しています。
  5. サプライチェーン
    • 部品や素材が、世界の製品製造に重要な役割を果たしており、日本国内だけでなくアジアやその他の地域におけるサプライチェーンの中核を形成しています。

特に輸出産業として外貨を稼ぐ(貿易黒字を保つ)ためにも重要な産業です。

製造業におけるXR

Product Life Cycleという考え方。

製品の設計から生産、顧客への提供、廃止に至るまでのプロセスをライフサイクルで考え、このサイクルを効率的に管理することで、コスト削減、品質向上、持続可能性の確保を目指す考え方になります。

「XR」と考えた時にこれらのプロセスにマッチするのは「企画」「設計」「製造」になります。

「企画」「 設計」

XR技術を使うことで物理的な試作品を作成することなく、設計を視覚化し、改善することが可能になります。 XR(AR/VR/MR)を用いたデザインレビューにより、デザイナー、エンジニア、顧客がリアルタイムでフィードバックに納得感を持つことができます。

「製造」

危険を伴う作業環境をVRやMRでシミュレーションし、安全にスキルを習得可能になります。 実機を使用せずとも実寸機材を用いたトレーニングが可能になります。 MRを活用しての組み立てや整備のトレーニングを実施する企業が増えています。

また、製造業の中でも「重い」「大きい」「動かせない」など質量に制限のある製品を扱う場合はよりXRと相性が良いと感じています。 データであれば質量は無視できるので、金型を起こしたり、トレーニングのために大型機械を準備する必要がありません。

ホロラボにおける製造業とXR

ここまでは一般的な内容を記載させていただきました。 ここからはホロラボとしての取り組みをご説明させていただきます。

=========

■売上比率

15.5%

■案件数

35%(86件/242件)

=========

ホロラボ全体売上のうち15.5%を占めています。

売上比率だけを見ると影響が少ないように見えますが、製造業向けの案件は全案件数242件のうち86件と35%を占めており案件数は産業別でトップの数となっています。

チャンスが多いと感じる反面、これは1案件における単価の低さも示しており「PoC」からなかなか抜け出せない現状も意味しています。

今後、ホロラボとしては「PoC」ステージを脱し、より幅広く現場に導入されるようにサービスを提供していきたいと考えています。

受託事例

製造業様における受託の事例は内部情報にあたるので公には出来ないですが、ほぼ2つの用途が大半を占めていました。

トレーニング

ダントツで多いのがトレーニング系のアプリケーションです。

紙を削減したい、大きな構造物をデータ上で操作したい。といった要望が非常に多かったです。

  • マニュアル
  • 組立/分解

遠隔支援

こちらもトレーニングに匹敵するくらいの引き合いがあったと感じています。

  • 現場への遠隔地からの支援

とにかく課題は「人手不足」になります。

如何にトレーニング自体を省人化するか、学んでいる人を早く即戦力にするか、距離の概念を無くし支援するか、この3つが製造業全体が取り組んでいる事だと感じています。

AssistsとMeta Quest 3の可能性

個人的にホロラボにとっての一つのチャンスが当社サービスAssistsとMeta社のQuest 3だと感じています。

詳しくはリンクからHPをご覧いただくか、当社へお問い合わせいただけたらと思いますが、 Assistsは「OJT不要のトレーニングアプリケーション」もしくは「空間パワーポイントアプリケーション」とお伝えしておきます。

製造業の現場におけるマニュアルや要領書はPower Pointで作ることが多いと思います。

そのコンテンツをAssistsを使うことで空間にコンテンツを配置し学ぶことが可能になります。

マニュアルや要領書をPCや紙で「見る」のではなく、Meta社のQuest 3を用いて「経験」することが出来ると考えています。

「PoC」の壁を脱し、数十、数百と採用されるサービスになってほしいと思います。

製造業における「Metaverse」の可能性

「Metaverse」は「超(メタ)」と「宇宙(ユニバース)」を組み合わせた造語で、元々は作家のニール・スティーヴンスンが1992年に発表したサイバーパンク小説『スノウ・クラッシュ』に登場する架空の仮想空間サービスの名称でした。

2021年に再度バズワードになりましたがその後は一気に聞かなくなりました。

ただし、技術としては非常に魅力的で「Product Life Cycle」の中心に「Database」と共存することで「Metaverse」としての真価が発揮できると考えています。

あまり書きすぎると当社がこれから行っていくことのネタバレになってしまうのでほどほどにしておきますが、「Database」+「AI」+「Metaverse」が進むべき方向性だと考えています。

物理の距離を無くし、AIにエージェントをしてもらいながらデジタルツインとしてのMetaverseが存在している。

これを製造業の現場で実現できると考えています。

また、COOの伊藤が書いた記事に記載されているARクラウド技術がさらに「Metaverse」を進化させることでしょう。

この技術を使うことでMissionにある「フィジカルとデジタルをつなげ、新しい世界を創造する」ことを実現できると確信しています。

さいごに

XR技術は製造業ではまだまだ「PoC」の壁を脱する事が出来ていない状況が続いています。

ただ、今あるサービスでも「PoC」を脱し現場で実運用できる兆しが見えてきました。

さらに未来は「Metaverse」としてビジネスが広がる可能性が高いと感じています。

ホロラボは引き続き製造業向けへの投資を行っていきたいと思います。

ホロラボとまちづくり

ホロラボ取締役COO、武仙です。新たな経営体制を敷いたホロラボの経営メンバーが日替わりで書く Advent Calendar 。

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今日はホロラボのまちづくり関連の取り組みについてお送りします。

※ホロラボの目指す、誰もが同じ未来の空間を見ながら語り合う未来のまちづくりのイメージ

1. ホロラボがまちづくりに取り組むきっかけ ~ Project PLATEAU

XR技術を主要テーマとするホロラボがまちづくり関連の取り組みをはじめたきっかけが国土交通省Project PLATEAUでした。

https://www.mlit.go.jp/plateau/

PLATEAU Viewerで、ホロラボオフィスのある五反田周辺を俯瞰する

国が旗振りをして、日本中の都市を3Dモデル化する取り組み。XR技術の課題の一つが3Dモデル制作コストだったりなので、広大な都市空間のコンテンツを作ったりするハードルが大きく下がるので大注目してました。

そんななかでご縁があって、武仙が登壇したイベントがこちら。まちなかでのXR利用についてARクラウドなお話しや、みんなで3Dスキャンをするお祭り「みんキャプ」の取り組みについてお話しをしました。

ここで、同じく登壇していらっしゃった東京都立大学の饗庭先生とイベント終了後に立ち話で「何かやりましょう!」というよくある口約束をしたんですが、まさかそれが急ピッチでPLATEAU Projectのユースケース開発企画として具体化をして、まちづくりへの市民参加を支援するシステムを実現するとは想像だにしていませんでした。

老若男女問わずさまざまな一般市民が未来のまちづくりへ楽しみながら参加出来るように

2. まちづくりにおけるXR

饗庭先生経由で協力をお願いした八王子市さんと企画の具体化を協議する中で見えて来たのが、まちづくりの市民参加の重要性とその課題。

高度成長期やバブル期に整備されたまちの様々なインフラや施設が老朽化したり技術革新により役割を終えたりで更新のタイミングを迎えます。人口が減っていく日本においては全てを自治体など公の予算で賄うのは現実的ではなく、PFI(Public Finance Initiative)など民間の費用や事業運営能力を頼る動きが増えています。公の資産を民間に譲渡や賃借するとなると地域住人の理解が不可欠となり、まちづくりへの市民参加の重要性が高まっています。

一方で、まちづくりには都市計画などのマクロな視点と地図や図面を読み解いたりの専門知識などが求められ、プロと一般市民の情報ギャップが大きい特徴があります。

市民参加型まちづくり3つの課題

  1. 探せない、わからない (まちづくりに関する情報公開の課題)

  2. 参加者層が偏っている (参加者固定化、多様性欠如の課題)

  3. 想像しづらい、残せない (難解さ、曖昧さの課題)

市民参加型まちづくり3つの課題

これらの課題に対して、Project PLATEAUによる3D都市モデルと、デジタル空間に直感的に触れることが出来るXR技術を組み合わせることで、誰もが未来の空間についての議論に主体的に参加出来ないか、と考えました。

また、市民ひとりひとりの意見をデジタル技術で保存・蓄積・活用することが、自治体に求められるEBPM(Evidence Based Policy Making)にも繋がりつつ、市民としても「自分の意見がプロセスに残っている」という参加してる手応えにもつながると考えました。

これを実現すべく開発したシステムがtorinomeです。

3. torinome - デジタルツイン x XR

torinomeは以下の3つのパートからなるプラットフォームです。

  1. torinome Web - 3D WebGISによる都市のデジタルツインで、色々なデータを追加配置可能

  2. torinome AR - torinome Webで作った空間を現地に反映するARアプリ

  3. torinome Planner - みんなでカードを動かして空間について議論するARカードゲームアプリ

torinome - Digital Twin + XR

4. これまでの取り組み

八王子市(2022年度~)

2022年度の最初の企画では、八王子市のご協力のもとで同市にある「北野下水処理場・清掃工場跡地活用」をテーマに、torinomeのプロトタイプ開発をしながら市民参加ワークショップを実施しました。

2022年度の八王子ワークショップ

初の取り組みではありましたが、当初の仮説だった3つの課題について、それぞれの成果を上げることが出来たと考えます。

市民参加型まちづくり3つの課題と結果

① 探せない、わからない (まちづくりに関する情報公開の課題)
・3D都市モデルとXRにより、見ればわかるように
・大量の情報を短時間に伝えることができた
・マクロとミクロ、様々な目線での情報提供と意見交換が実現した

② 参加者層が偏っている (参加者固定化、多様性欠如の課題)
・若年層参加者が増えて、参加者半数以上が30代未満に

③ 想像しづらい、残せない (難解さ、曖昧さの課題)
・XRによる具体的なビジュアルとスケール感で理解の齟齬が少ない
・参加者の視点や意見がデジタルツインに残る

市民参加型まちづくり3つの課題と結果

一方で、短期間で企画しながらプロトタイプを開発したこともあり、使い勝手や体験としても実験的な要素が強く、企画や準備、オペレーションも大変、などの課題も明らかになりました。

八王子市ではこのあと3年連続で取り組みをいただいており、3つのまちづくりプロジェクトでご利用をいただいています。

広島市・相生通りのトランジットパーク化構想(2023年度)

Project PLATEAUユースケース開発としての初年度が成功裏に終わって、発展的に継続をしようとの企画で臨んだのが2023年度でした。

テーマは、全国展開可能なプラットフォームにすること。2年目は全国展開を目指して日建設計様・日建設計総合研究所様と協力し、広島市都心部の道路空間再編をテーマにしたプロジェクトを実施しました。

広島・相生通りをいきいきした歩行空間に

八王子市北野では7.5ヘクタールという比較的大きな空間の利用を5~10年といった長い期間で検討をする話でしたが、広島市はウォーカブルなまちの実現をした上で歩行空間をどのように活用したら面白くなるか、といったスケールの異なるテーマでしたが、同じシステム使ったワークショップが企画開催出来、汎用的に活用が出来るようになりました。

加古川市・加古川駅前活性化(2024年度)

今年度も日建設計グループのご協力を得て、今度は加古川市におけるまちづくりに活用しています。

加古川市はスマートシティに力を入れており先進的な取り組みが多く、自治体の意思決定への市民参加を目指したオープンソースプラットフォームDecidim採用していたり、都市OSとも言われるデータ基盤FIWAREを導入していたり。

本年度は、このスマートシティプラットフォームのDecidim・FIWAREをtorinomeとシステム連携することで、それぞれワークショップ事前事後の市民・自治体間のコミュニケーション継続性の実現と、ワークショップで活用するデータの充実を狙います。

※日常の空間にまちづくりワークショップの結果が重畳表示されるAR

ワークショップの開催情報や参加者募集や、開催後の投票やコメントなどもDecidimに掲載されて、その後のコミュニケーションへと活用される予定です。

加古川市DecidimにPLATEAUデータが組み込まれた様子

5. 今後の展望

まちづくりをターゲットとして開発したtorinomeですが、デジタルツインとXRを接続して得られる体験は上記ご紹介した事例以外でも都市開発コンサルタントやゼネコンさんなどですでにご採用をいただいており、広く空間の可視化やそれに関連したコミュニケーションを円滑化ツールとしてご評価を頂いています。

また、日本のみならず海外での活用も期待をしています。

台湾は日本のPLATEAUと同様のデータフォーマットを採用したTaiwan 3D Map Serviceが公開されており、オープンデータとして配信されています。

国立台北科技大学・Chen先生の実施レポート

国立台北科技大学のチームが同データとtorinomeを使ったまちづくり市民参加ワークショップを企画開催して、現地でも大盛り上がりイベントが開催されました。

また、11月にスペイン・バルセロナで開催されたSmart City Expo World Congress 2024にも国土交通省Project PLATEAUチームの一員としてtorinomeを出展をしましたが、ブースを訪れるスマートシティ関係者からも大きな反響を得ました。

海外でProject PLATEAUのユースケース一例としてPR

torinimeが未来のまちづくりを実現します。

まちづくりの市民参加の分野において、国境を越える新しい価値をtorinomeが実現しつつあります。

この、デジタルツインとXRが繋ぐ新しいまちづくり。

まちづくりのプロの目線と、その街で暮らし、学び、働く、多種多様なステークホルダの相互の「WILL」を3Dで直感的に可視化をして、もっとずっと分かり合えるプラットフォームを目指して。

さてさて、ホロラボAdvent Callenderの次は、、、「製造業におけるXR」です!

さまざまな業界でのXRや空間コンピューティングの活用

ホロラボ Advent Calendar 2024の9日目、2週目に入り担当は再びCEOの中村です!

adventar.org

今日は「さまざまな業界でのXR/空間コンピューティングの活用」について書きます。

浸透がゆっくりなXR/空間コンピューティングですが、使っている人は徐々に増えています。

今回はその用途について概観を書いていきます。

XR/空間コンピューティングの用途

大きく日常利用向けと業務用途向けに別れます。

ホロラボでは後者の業務用途に注力しており、そちらに比重を置いて紹介します。

ひとくちにXRと言っても、いままでは現実の世界を遮蔽してデジタルコンテンツのみを表示するMeta Quest 2などのVR系と、現実の世界とデジタルコンテンツを重ね合わせるHoloLensなどAR系に分かれていました。

最近ではMeta Quest 3やApple Vision Proのように、現実を遮蔽することも、現実を見せることもできるMRや空間コンピューティングのデバイスが増えてきました。

1つのデバイスで従来のVRもARも実現できるようになるので、デバイスは柔軟に選択ができます。

目的によってどのように実現するか。ということに注力できます。

環境含めてデジタルデータで構成されるVR

環境などは現実で構成されるAR

日常利用

Meta QuestやApple Vision Pro、XREALのサイトが日常での利用例となっています。

各社それぞれ特長があります。 MetaやHTCはゲームとして、Appleはコンピューターとして、XREALは大きなディスプレイとしての利用を推しています。

現状では日常使いというところまでは達していませんが、5年後、10年後には、日常的にヘッドマウントのコンピューターを装着して生活する日が来ると考えています。それを実現するために、ホロラボの新しいMISSIONとして「新たな世界を創造する」を掲げました。

Meta QuestやApple Vison Pro のようなヘッドセット型はゲームや映画など動画の閲覧への利用をきっかけとして日常的に使えるコンピューターに。XREALのようなグラスデバイスはスマートフォンのディスプレイの代わりとしてメガネのように装着しながら生活をするような世界です。

Apple Vision Pro を用いたコンピューターとの関わり( Apple Vision Proが登場 — Appleが開発した初の空間コンピュータ - Apple (日本) より引用)

例えば、日常的に利用するユーザーが多いサービスとしてVR SNSのVRChatがあります。

hello.vrchat.com

VRChatではユーザーが思い思いのアバターで世界に入ることによって、自分を表現しながら他のユーザーとのコミュニケーションを楽しみます。

中にはこの世界で数千時間を過ごす人もおり、その人たちにとってはVRChatの中がリアルなんだと個人としては受け取っています。「Virtual」が本来は「実質的な」と訳すと言われるように、VRの世界が実質的に現実となっています。

業務利用

業務利用についても各社のサイトを見てみましょう。

業種の傾向としては、

  • 製造業
  • 建設業
  • 小売業
  • 医療
  • 教育現場
  • 官公庁 などで用いられることが多いです。

シナリオの傾向としては、

  • トレーニング
  • 現場の業務支援
  • 販売支援
  • 教育
  • それらのコラボレーション の事例が多くあります。

コラボレーションはメタバースを含むこともあります。メタバースは数年ほど前に大きな話題となり現在は収束したようにも見えますが、実際に利用している企業も多く、流行から実利用へフェーズが移っています。

このように自社の業種とシナリオを組み合わせることによって利用用途を検討します。

明日以降の記事ではこの中のいくつかの利用方法について深掘りをしていきます。

製造業とトレーニング

例えば製造業であればトレーニングの用途で利用されることが多くあります。

危険な場所や、使い方を誤ると危ない設備の利用を擬似的に体験することによって安全な業務を遂行できる安全トレーニング。

設備や業務そのもののデバイスを通してトレーニングを行う場合もあります。この時、ARよりであれば実際の対象をモノに教材を3Dとして重ね合わせてトレーニングをする方法や、VRよりであれば対象のモノ自体もデジタル化してデジタル上でトレーニングを行う方法があります。

MRトレーニングアプリ Assists

ホロラボでは「Assists(アシスツ)」というアプリケーションでこれを実現します。

Assistsは自動車会社や重工業系の会社など、組み付け作業のある業種のお客様から評価をいただいています。

従来のテキストや動画のマニュアルと組み合わせて使用することで、隠れた場所の視点や、実際の現場に重ねての動きなど、従来のマニュアルでは難しい視点や見せ方によって理解度を上げ習熟度の早期工場に寄与します。

ご利用いただいているユーザーの事例として、製造業の部品組み立て作業での教育訓練のケースで、いままで10日かかっていたが、5日に短縮されました。

Assistsの導入効果としては、トレーンング期間の短縮に限りません。ヘッドセットとアプリケーションでトレーニングが完結するため、トレーナーの同席が不要になり、自主学習もできるようになります。これによってトレーナーが見られる人数の制限がなくなり、より多くの人数のトレーニングを並行して実施することが可能になります。

MRトレーニングアプリ Assists

装着者の動きをリアルタイムで記録する TechniCapture

現場の動き自体を記録することで、トレーニングの教材自体を作成する、ベテランの動きを記録して視覚的に学ぶための「TechniCapture(テクニキャプチャ)」も自動車会社様など製造業各社から評価をいただいています。

Meta Quest 3のヘッドトラッキングやハンドトラッキングを利用して、ベテランの動きを即時記録し、再生が可能になります。これによって記録したベテランの動きと初学者の動きとの比較が可能となり、作業や業務フローのどこがボトルネックとなり時間がかかっているのかということが比較できるようになります。

こちらの動画は株式会社アイシン様の導入事例となります。

www.youtube.com

建設業、製造業とモデルの可視化と現場利用

XR/空間コンピューティングは3Dのデータの表示と相性が良いため、建設業のBIM(Bilding Information Modeling)や3D CADとの相性が良いです。しかし、BIMや3D CADは多くのXR/空間コンピューティングが対応しているファイルフォーマットとは異なる独自の形式であることが多いです。ホロラボではこの課題を解決し、手軽に3Dデータを可視化できる「mixpace(ミクスペース)」というサービスを提供しています。

mixpaceはスーパーゼネコン各社様をはじめとして、建設業、製造業で広くご利用いただいています。

mixpaceを利用することで、手元に対応ファイルがあれば専用Webサイトにアップロードすることで、数分でデバイスでの表示が可能になります。

3DデータをARで扱う用途について、3Dデータは多くの場合、実寸で設計されているので、デバイスでも実寸の表示が可能です。これによって建物の完成イメージや、設備の配置検討を、実際の現場で実際のサイズで実施することができます。

従来の図面や画面での3Dデータ表示の場合、実際の大きさは見ている人それぞれの想像に委ねることになります。想像はそれぞれの習熟度に依存するので、実際のものになると想像と違っていることが多いという課題があります。これを3Dデータで実寸で確認することにより、実際のものに近い状況を作ることができます。これによって人による齟齬が小さくなり、合意形成が早くなること、実際のものができた後の認識の違いを少なくすることができます。

3D CAD/BIMファイルのAR/MR見える化ソリューション mixpace

Apple Vision Proでの建設、製造設計・デザイン分野での利用

Apple Vision Proによる高精細なディスプレイ表示によって、いままで導入が難しかった建築設計会社様を含む建設業や、PC用のデバイスでの利用が多かった自動車会社様をはじめとする製造業のデザインプロセスへの利用が可能になりました。

この分野はVarjoやHTCなどPCに接続するタイプのデバイスを利用することが多かったのですが、Apple Vision Proによって表示精度、表示性能などが近づき、いままで利用が難しいかった設計・デザインフェーズでの利用が進み始めています。

ホロラボでも設計やデザイン分野でのご依頼をいただき、実現に向けての取り組みを行っています。

建設業のBIMとXR/空間コンピューティングの親和性

業界を建設業に絞ると、BIMとXR/空間コンピューティングの親和性が高く、ホロラボ創業当初よりご依頼をいただいております。

建設業との取り組みについては、先方のプレスリリースに掲載できるような成果のご支援をしています。

www.obayashi.co.jp

BIMの取り組みをご一緒する中で、ホロラボでもBIMの知見をため、デバイスに関わらないBIM + Webのシステムのご支援が可能になりました。

www.taisei.co.jp

官公庁とコラボレーション

官公庁でもXRやメタバースの利用が増えてきています。地方自治体では観光とXRやメタバースを組み合わせることで環境客の誘致を行うところが増えています。

ホロラボの事例としては、国土交通省の3D都市モデルPLATEAUのユースケース開発があります。

PALTEAUは土交通省が主導する、日本全国の3D都市モデルの整備・オープンデータ化プロジェクトで、全国数百の都市の3Dモデルがオープンデータとして無料で公開されています。

www.mlit.go.jp

ホロラボではPLATEAUのユースケース開発としてまちづくりをテーマとした取り組みを行っています。

地図上に配置された情報をPLATEAUと合わせて3Dで情報の共有、現実の場所にてARで実寸表示することで自治体と住民の理解度を合わせ、新しく作るまちの合意形成を促します。

PLATEAUとXRを利用したまちづくり事例

一般ユーザーへの体験

日常利用にも近いところですが、一般ユーザー向けの体験コンテンツとしての取り組みも進んでいます。

「品川イルミネーション2023 with XR City」の事例では、一般ユーザーのスマートフォンにARアプリをインストールし、まちを回遊してコンテンツを楽しみます。 アプリの施策として、回遊することでポイントが貯まり、ゴールの施設でそのポイントを使って食事ができるようになっています。

3Dのコンテンツを利用することで、まちの中をダイナミックに動くコンテンツが、従来の位置情報を活用した回遊アプリからさらに魅力的になります。

本プロジェクトでは、品川港南口の開発を行っている、NTTアーバンソリューションズ株式会社をはじめとするNTTグループの各社様のご支援となっています。

品川イルミネーション2023 with XR City

メーカー各社とのパートナーシップ

ホロラボでは大手のお客様とのパートナーシップだけではなく、メーカー各社とのパートナーシップを結んでいます。

Apple, Microsoft, MetaのBigTechをはじめ、日本国内メーカーとしてグラスデバイスの設計・製造を行っているNTT系のXR事業会社であるQONOQ社ともパートナシップを結んでいます。

これのパートナシップによって適切な情報を取り入れご提供することで、それぞれのハードウェアの特長を活かしたアプリケーションやシステムの提案、開発を行っています。

まとめ

このように業種、シナリオの組み合わせによって、利用価値が高い用途があります。XRや空間コンピューティングを組み合わせた業務改善、業務支援にご興味があればぜひ下記リンク先よりお問い合わせください。 具体的でないふわっとした状態からでもホロラボはご支援が可能です。

hololab.co.jp

今回の記事の内容に関わらず、XRや空間コンピューティングに興味があり、自社での適用ができないか。とお考えの方もぜひお問い合わせください。こちらも、具体的ではない段階からご連絡いただけると、そこから具体化したご提案が可能になります。

このようなお客様へ成果を出すメンバーを募集していますので、ぜひご応募ください!

hololab.co.jp

明日は伊藤さんが担当します。 お題はPLATEAUの取り組みについての深掘り、「torinomeとPLATEAU、まちづくりでのXR/空間コンピューティングの活用」です!