Smart City Expo 2024 出展レポート
バルセロナ——市民参加型DXの発祥地としても知られるこの都市で、未来の都市づくりをテーマに世界中の最新技術が集結する「Smart City Expo World Congress 2024」が開催されました。ホロラボは、国土交通省の「PLATEAU」プロジェクトと連携し、日本発のXRデジタルツインプラットフォーム「torinomeを活用したXRまちづくり」を出展しました。
「torinomeを活用したXRまちづくり」が目指すのは、市民が誰でも気軽に参加できる「楽しいまちづくり」を実現すること。今回の出展では、こうした取り組みを世界に発信し、多くの反響を得ることができました。このレポートでは、展示の様子、得られた学び、そしてまちづくりの新しい可能性についてお届けします!
Smart City Expo 2024 とは
Smart City Expo World Congress 2024(SCEWC 2024)とは? Smart City Expo World Congress(SCEWC) は、2011年からスペイン・バルセロナで毎年開催されている、世界最大級のスマートシティ関連イベントです。都市が直面する課題の解決や未来の都市づくりをテーマに、世界中の最新技術やアイデアが一堂に集まります。
開催概要 会期:2024年11月5日(火)~7日(木) 会場:Fira Barcelona Gran Via 主催:Fira Barcelona
公式サイトによると、2024年実績は以下の通りで、世界140カ国以上、800都市以上から企業、自治体、専門家が集まり、都市イノベーションを支える技術やソリューションが発表される場となります。持続可能な都市計画、市民参加型まちづくり、デジタルツインなど、多岐にわたるテーマについて展示やディスカッションが行われます。
来場者数:25,771人 出展者数:1,150団体 登壇者数:632名 セッション数:261
SCEWCは、都市の未来を形作るための最先端の知識とネットワーキングが得られる、まさに「都市イノベーションの祭典」です。
「XRのまちづくり」を世界へ発信する理由
「私たちのまちづくりの楽しさを、世界中の人たちと共有したい!」 これが、ホロラボが「Smart City Expo World Congress (SCEWC) 2024」に出展する理由でした。私たちの「torinomeを活用したXRまちづくり」は、国土交通省が推進する、日本全国の3D都市モデルを整備・オープンデータ化するプロジェクト「PLATEAU」のユースケースの一つで、今年で3年目を迎えます。
Project PLATEU Usecase XR技術を活用した市民参加型まちづくり v3.0 XR デジタルツイン torinome(トライノーム)
PLATEAUの取り組みは、まちづくりの未来を大きく変える可能性を秘めています。その魅力を伝え、海外でも新しい価値を生み出すために、JAPANパビリオンで出展されると聞いた時、その有用性をさらに際立たせる役割を担いたいと、私たちは出展に名乗りを上げました。
JAPANパビリオン内PLATEAUブースはこんな感じでした!
「市民参加型DXの聖地」バルセロナへの挑戦
バルセロナ——その美しい街並みやパエリアの美味しさが有名ですが、実は市民参加型DX(デジタルトランスフォーメーション)の先進地としても注目されています。世界的に有名な「Decidim」(市民参加プラットフォーム)はこの地で生まれ、EU主導で開発された「FIWARE」(オープンデータ連携基盤)もヨーロッパ全体で広がりを見せています。今年度、DecidimやFIWAREと連携し、兵庫県加古川市と共に広い市民参加を促す取り組みを進めている私たちにとって、このバルセロナの地でその事例を紹介する機会は、まさに運命的でエキサイティングな経験となりました。
街のあちこちでDecidimのポスターを見かけました
写真で振り返る Smart City Expo 2024
SCEWCの展示会場で、私たちが「torinome」をどのように紹介したのか、その実際の雰囲気をお伝えします。これから出展を考えている方や、イベントに興味がある方に向けて、来場者の反応や展示ブースの設営、現地での活動内容を写真とともに振り返ります。
世界中から最先端の技術が集結する「Smart City Expo World Congress 2024」の会場。会場内には、スマートシティをテーマにしたブースが所狭しと並び、多くの来場者で賑わっていました。
JAPANパビリオンの様子。国内外問わずたくさんのゲストが日本の取り組みに興味を持って足を運んでくださいました。
特に、PLATEAUブースは体験が途切れないほどの人気で、人だかりができて通行ができないなんてこともしばしば。
やっぱりホロラボ!COO 武仙がAppleのVision Proを被って登壇!異彩を放つプレゼンに海外の来場者も興味津々!
世界の反応は?—バルセロナで感じた手応え
WOWが連続するデモ体験
カードにiPadをかざすと、ARで建物が立体的に浮かび上がり、配置したカードがすぐWeb上のデジタルツインに反映される。この一連のデモに、来場者は「おお!」と楽しそうな反応を見せてくれました。「今、現地に行けば、このデータがそのままARで見られるんですよ」と伝えると、「ホントに!?それは面白い!」と驚きと感心の声が。言葉が通じなくても、XRの直感的な体験がその魅力を一瞬で伝えてくれることを改めて実感しました。
ブース来場者の反応・データ紹介
今回のtorinomeブースには、3日間で合計152人以上の来場者が訪れました。国別の内訳では、開催地スペインからの参加が27人(約18%)で最多、次いで日本が21人(約14%)、ドイツが14人(約9%)、フランスが8人(約5%)、中国が7人(約5%)と続きました。ヨーロッパ各国を中心に、日本やアジアからも幅広い参加があり、国際的な広がりを実感できる結果となりました。都市別に見ると、バルセロナをはじめ、ヘルシンキ、東京、リスボン、ワルシャワなど主要都市からの参加が目立ち、都市間交流の重要性を改めて感じる機会となりました。
来場者の所属組織については、学術機関が33人(約22%)で最多、次いで地元中小企業が28人(約18%)、大手グローバル企業と政府関係者がそれぞれ24人(約16%)と、多様な背景の方々がブースを訪れました。また、担当分野では「スマートシティ」に関連する来場者が36人(約24%)にのぼり、次いでIT・エンジニアリングが25人(約16%)、研究・開発・イノベーションが18人(約12%)、事業開発が16人(約11%)と続きました。こうした来場者が一堂に集まり、技術やイノベーションがもたらすまちづくりの可能性を共有し、具体的なアイデアを議論する場となりました。
「こんなのは見たことない!」日本の技術に寄せられた期待
PLATEAUを活用したtorinomeのXRまちづくりは、来場者に新鮮な驚きと期待を与えました。「こんなのは初めて見た!」といった声が多く、直感的でわかりやすい操作性が高く評価されました。「市民参加のまちづくりの議論にとても有用だね」という具体的な意見も寄せられ、まちづくりの可能性を実感しました。
また、PLATEAUについては「自分の国でもこういうプロジェクトをやってほしい!」という学生の声や、「日本がうらやましい!」といった感想が聞かれ、国主導で3D都市モデルを公開する取り組みが国際的にも注目を集めていることを感じました。
PLATEAUとtorinomeの組み合わせは、市民参加を促進し、都市計画に新たな可能性をもたらすツールとして、国境を越えても効果を発揮できると感じました。今回の展示を通じて、未来のまちづくりを支える選択肢を示すことができたと思います。
異分野への挑戦と広がるつながり
ホロラボとしての海外出展は今回が2回目。昨年の「AWE 2023」はXR業界の展示会で、業界の仲間や専門家が多く集まるいわば「ホーム」でした。技術を共有し、XRの未来について語り合える場で、私たちにとってもなじみ深い環境でした。
一方で、今回の「Smart City Expo 2024」はスマートシティ分野の展示会。ホロラボにとっては「XRを活用したまちづくり」という異分野への挑戦であり、準備段階では「場違いではないか」と少し不安に感じる部分もありました。しかし、PLATEAUブースを中心にさまざまなコラボレーションが生まれ、その不安は次第に解消されていきました。
PLATEAUブースには、PLATEAU ViewやRe:Earthなど、PLATEAUの基盤を支える技術を提供するEukaryaさんや、3Dプリンタで作成した駒を使い、直感的にまちづくりのワークショップを実現する「Tangible Interface XR」を開発しているインフォ・ラウンジさんと山手総合計画研究所さんが参加していました。企業やプロジェクトの垣根を越え、「PLATEAUファミリー」として現地で素晴らしいコラボレーションが実現しました。
さらに、これは当日知って驚いたのですが、3次元人流プロジェクトでご協力いただいている東急不動産さんや、MaaS事業でコラボレーションしている名護市さんもブースを出展されており、現地でtorinomeを活用した取り組みをご紹介いただいていました。
「異分野への挑戦」と感じていたスマートシティ分野の展示会も、ふたを開けてみれば、PLATEAUファミリーや多くのパートナーのみなさまのおかげで、居心地の良いホームのような場となりました。この場での新たな出会いや広がるつながりは、ホロラボの次の挑戦に向けて大きな力になったと感じています。
番外編 ~ 現地でtorinomeを使って観光してみた!! by武仙
せっかくtorinomeをPRしにバルセロナに行ったので、観光にも使ってみないと!ということで、torinomeを使ったバルセロナ観光の成果(?)をご紹介します。
まず、こちらのtorinome Web のページにアクセスしてみてください。ちょっとぼんやりした画面が出てくるかもしれませんが、それは現地の地表データが非表示になっているためです。左側の地図アイコンから「Google Photorealistic 3D Tiles」のトグルスイッチをオンにすると……美しいバルセロナの街並みがニョキニョキと現れます!
さらに、torinome Webと連携するiPad用アプリ「torinome AR」には、GPSを強化したVPS機能が搭載されています。この機能を使えば、位置情報付きの写真や動画を撮影して、torinome Webにアップロード可能。今回、現地の周遊ツアーバスに乗りながら撮影を行ってみたところ、行ったルートに沿って写真が並び、「どこで何を見たのか」が一目でわかる素敵な記録が完成しました。
また、現地でスキャンした3Dデータも配置可能です。モンジュイックの丘で海を眺めるすまのべ!のお二人が何回このデータに登場するか数えてみてください!
torinomeを使えば、体験の記憶をテキストや画像、動画、そして3Dモデルとしてデジタルツインに配置する、新しい観光の楽しみ方が実現します。未来の観光を少しだけ先取りしてみた、そんな体験レポートでした!
XRがつなぐ世界共通のまちづくり
今回の「Smart City Expo 2024」への出展は、ホロラボにとって海外市場での可能性を探る貴重な機会となりました。国や地域を超えて、まちづくりにおける課題が驚くほど共通していることを改めて実感しました。地域の声を反映した計画づくりや市民参加の促進といったテーマは、多くの場所で共有されており、それに応えるための取り組みが求められています。
「torinomeのXRまちづくり」は、こうした共通の課題に対し、言語を介さず直感的に体験を共有できるXRの特性を活かして取り組むツールです。そのため、国境や文化の壁を超え、幅広い地域で活用される可能性を感じています。展示会を通じて得られた反応やフィードバックは、こうした広がりを実現するための大きなヒントとなりました。
私たちは、XRを通じて「WOW」を世界に届け、「楽しいまちづくり」の未来を広げていきたいと考えています。PLATEAUと共に歩みを進めながら、この挑戦が国際的な課題解決への一助となることを願っています。これからも国内外での経験を重ね、新たな価値を創造し続けていきます。
(文章:田野、加茂、武仙)