ホロラボ Advent Calendar 2024、12日目は、執行役員 林が担当します。
前回の記事は 2024/12/5
ホロラボの技術的な専門知識 とチームが使用するツールとプラットフォーム - ブログ@HoloLabInc
でした。
テーマは 「ホロラボにおける“メタバース”開発」です
皆さんは新幹線を利用しますか?
私は新幹線をよく利用します。
地方に住んでいるため、ホロラボ(東京/五反田)に出社する時は、基本的には新幹線を使います。
20代の頃から地方在住でありながら、関わるプロジェクトは東京メンバー主体であることが多く、毎週定例会議のために印刷した資料をたくさんカバンに入れて日帰りで往復していました。
新幹線のチケットは、金券ショップで購入した回数券を利用し、乗車前に自動券売機で座席を指定して発券していましたが、今はスマートフォンを利用してオンラインで、駅に向かいながら座席を予約したり、時間変更ができるので大変便利になったと思います。
ちなみに東海道新幹線の指定席の回数券は2022年に既に販売が終了し、自由席の回数券はまさに今月(2024年12月)に販売が終了するそうです。
以前から新幹線に乗っているときに実施していることがあります。
それは開発中のアプリケーションの動作検証です。
新幹線はモバイル通信の状態が不安定で、トンネルの中に入ると通信が途絶えたりします。
通信が切断がされ、思いがけないエラーが出たり、通信の遅さから、通常時とは異なる順番でコールバック(処理の呼び出し)が起きて、意図しない挙動をしたり、処理が遅くてボタンが反応せずイライラしたりします。
また、移動中はスマートフォンのテザリングを利用しているため、オフィスや自宅にいる時と違って、データ通信サイズも気になってしまいます。大きなデータ通信が伴うアプリケーションを利用すると心理的に不安になったり、利用を控えたりしてしまいます。(非機能要求)
新幹線に乗車時のような不安定な通信環境でも、ストレスなくアプリケーションが利用できたり、目的のタスク実行や娯楽の享受が達成できるか?ということも、大切な品質基準と考えています。
もちろん開発内容によって、公共の場での利用は控えたり、画面は暗くしたり下を向けて周囲から見られないようにしたり、細心の注意を払って実行しています。一方、Meta QuestやApple Vision Proなどは新幹線の中で利用していても、周りからディスプレイを覗かれることはないので安心です。周りから不思議な目で見られることもありますが、こちらはパススルー機能で「お見通し」です。
はい。では本題です。
ホロラボにおいて、いわゆる「メタバース」と関連するプロジェクトは多く、私もいくつか関わってきました。(※1)
メタバースという言葉はなかなか扱いが難しく、2023年頃にバズワードとして流行した後、大きく急すぎる期待に反して幻滅期に入りました。いわゆるオワコン扱いです。 しかし、メタバース は幻滅期を乗り越えて、これから始まるところです。
メタバースという言葉は、総務省の情報通信白書 令和6年版(※2) において、
メタバースとは、インターネット上に仮想的につくられた、いわばもう1つの世界であり、利用者は自分の代わりとなるアバターを操作し、他者と交流するものである。仮想空間でありながら、メタバース上で購入した商品が後日自宅に届くなど、現実世界と連動したサービスも試験的に始まっているほか、仮想的なワークスペースとしてBtoBでの活用への広がりも期待されている。
として定義/紹介されています。また、そのメタバースの市場規模は
2022年の461億ドルから2030年には5,078億ドルまで拡大すると予測されている
として着実に成長する分野(8年で11倍)であると予測がされています。
メタバースの中でもeコマース/ゲーム/ショッピングなどの消費者向け分野の成長が主に期待されているのですが、ホロラボが得意としている製造業/AEC業界など、ビジネス向け分野においてもメタバース・ワークプレイスや教育/セミナー/プレゼンテーション/設計レビュー/デジタルツイン連携の分野は期待されており、実際お声がけが多いです。
メタバースとデジタルツインの違い
メタバースと近い言葉で「デジタルツイン」というものもあります。
メタバースとデジタルツインの違いについては、同白書においては
メタバースとデジタルツインは、それらが存在する空間が仮想空間である点は共通であるが、その空間に存在するものが実在しているものを再現しているかどうかを問わないメタバースに対して、デジタルツインは、シミュレーションを行うためのソリューションという位置づけであるため、現実世界を再現している点が異なる。
として紹介されています。
ホロラボのMissionである 「フィジカルとデジタルをつなげ、新たな世界を創造する」はまさに、この実在する現実世界と仮想空間を組み合わせ、デジタルツインとメタバースの生み出す価値を追求するという事が、大きなテーマの一つです。
ホロラボでは、Webベースのデジタルツイン基盤システムである torinome(トライノーム) も開発しており、ちょうど、昨日の XR Kaigi Award 2024 の エンタープライズ部門 でアワードを受賞いたしました。
また、私自身のチームでは「ファクトリー メタバース」というコンセプトを掲げ、その中でどのような価値を提供できるかを、クライアントの皆様と模索/追及するプロジェクトをで進めています。
ファクトリーメタバース のコンセプト
- ファクトリーメタバースは毎日PCやスマホのようにメタバースで仕事をする空間 メタバースプラットフォーム
- 世界中どこにいてもヘッドセットを装着することで同じ仕事場に入ることができ、同じ仲間がいて、同じ仕事ができる。
- 物理的に作る製品のライフサイクルに合わせて様々な用途での利用ができる。
- 物理製品ができる前の企画・設計段階から、製品が販売され顧客の元に行き製品を価値を発揮している最中、最後は製品が役目を終えるまでデータとメタバースは製品の支援を行うことがでる。
それはホロラボの単発のソリューションだけではなく、継続包括的なプラットフォームとして、安全なデータ基盤と、その上で多彩なコミュニケーションを提供できるアプリケーションを提供することで、製造業の抱える課題やDXに価値を提供していくことを目指しています。
確かにそこにあるもの
このコンセプトを実現させるために、最近私自身が、注目しているのは、利用者がアクセスするその仮想/現実空間を「確かにそこにあるもの」として定着させる方法です。
その空間が、その利用者がアクセスされた時だけ再現されるのではなく、アクセスの有無にかかわらず、常に存在し変化するという事を実現することで、「確かにそこにあるもの」として実感させるにはどのような技術要素が必要かと考えると
- 空間が元来保持している情報と、利用者の介入による変化情報の永続化/並列化
- AIエージェントや現実のセンサーとの連携したコミュニケーションとフィードバック
- 仮想空間/現実空間を連携させたコンテンツ作成支援環境
- 空間への多彩なアクセス方法/ユーザーシナリオ
が必要になってくると考えています。
メタバースやデジタルツインというと、大きく未来的なものを思い浮かべてしまうかもしれませんが、実際の業務の中で使い、価値を生み出していくものと考えると、工場の中でも海外でも、新幹線での移動中でも自由にアクセスできるプラットフォームを目指していきたいと考えています。
スケールが大きく取り留めのない話ですが、大きなコンセプトと具体での現場での課題解決を行き来しながら、考え、そして実行していきたいと考えています🚄
以上
※1 ご紹介できるものとしては、NTTコノキュー社の新感覚街あそびARアプリ「XR City」に関してホロラボはサービス開発とコンテンツ開発をパートナーとしてプロトタイプ設計/初期開発に関わらせていただきました。
- XR City|株式会社NTTコノキュー
- ホロラボが、NTTドコモが提供するARサービス「XR City」のサービス開発とコンテンツ開発をパートナーとして担当しました | 株式会社ホロラボのプレスリリース
※2 総務省の情報通信白書 令和6年版 「特集② 進化するデジタルテクノロジーとの共生 /第2節 AIの進化に伴い発展するテクノロジー」
明日
明日は新規事業開発部 部長/執行役員の久保山さんが担当します。
お題は「空間コンピューティングによるDXの期待と現実」です!