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株式会社ホロラボのブログです

ホロラボとまちづくり

ホロラボ取締役COO、武仙です。新たな経営体制を敷いたホロラボの経営メンバーが日替わりで書く Advent Calendar 。

adventar.org

今日はホロラボのまちづくり関連の取り組みについてお送りします。

※ホロラボの目指す、誰もが同じ未来の空間を見ながら語り合う未来のまちづくりのイメージ

1. ホロラボがまちづくりに取り組むきっかけ ~ Project PLATEAU

XR技術を主要テーマとするホロラボがまちづくり関連の取り組みをはじめたきっかけが国土交通省Project PLATEAUでした。

https://www.mlit.go.jp/plateau/

PLATEAU Viewerで、ホロラボオフィスのある五反田周辺を俯瞰する

国が旗振りをして、日本中の都市を3Dモデル化する取り組み。XR技術の課題の一つが3Dモデル制作コストだったりなので、広大な都市空間のコンテンツを作ったりするハードルが大きく下がるので大注目してました。

そんななかでご縁があって、武仙が登壇したイベントがこちら。まちなかでのXR利用についてARクラウドなお話しや、みんなで3Dスキャンをするお祭り「みんキャプ」の取り組みについてお話しをしました。

ここで、同じく登壇していらっしゃった東京都立大学の饗庭先生とイベント終了後に立ち話で「何かやりましょう!」というよくある口約束をしたんですが、まさかそれが急ピッチでPLATEAU Projectのユースケース開発企画として具体化をして、まちづくりへの市民参加を支援するシステムを実現するとは想像だにしていませんでした。

老若男女問わずさまざまな一般市民が未来のまちづくりへ楽しみながら参加出来るように

2. まちづくりにおけるXR

饗庭先生経由で協力をお願いした八王子市さんと企画の具体化を協議する中で見えて来たのが、まちづくりの市民参加の重要性とその課題。

高度成長期やバブル期に整備されたまちの様々なインフラや施設が老朽化したり技術革新により役割を終えたりで更新のタイミングを迎えます。人口が減っていく日本においては全てを自治体など公の予算で賄うのは現実的ではなく、PFI(Public Finance Initiative)など民間の費用や事業運営能力を頼る動きが増えています。公の資産を民間に譲渡や賃借するとなると地域住人の理解が不可欠となり、まちづくりへの市民参加の重要性が高まっています。

一方で、まちづくりには都市計画などのマクロな視点と地図や図面を読み解いたりの専門知識などが求められ、プロと一般市民の情報ギャップが大きい特徴があります。

市民参加型まちづくり3つの課題

  1. 探せない、わからない (まちづくりに関する情報公開の課題)

  2. 参加者層が偏っている (参加者固定化、多様性欠如の課題)

  3. 想像しづらい、残せない (難解さ、曖昧さの課題)

市民参加型まちづくり3つの課題

これらの課題に対して、Project PLATEAUによる3D都市モデルと、デジタル空間に直感的に触れることが出来るXR技術を組み合わせることで、誰もが未来の空間についての議論に主体的に参加出来ないか、と考えました。

また、市民ひとりひとりの意見をデジタル技術で保存・蓄積・活用することが、自治体に求められるEBPM(Evidence Based Policy Making)にも繋がりつつ、市民としても「自分の意見がプロセスに残っている」という参加してる手応えにもつながると考えました。

これを実現すべく開発したシステムがtorinomeです。

3. torinome - デジタルツイン x XR

torinomeは以下の3つのパートからなるプラットフォームです。

  1. torinome Web - 3D WebGISによる都市のデジタルツインで、色々なデータを追加配置可能

  2. torinome AR - torinome Webで作った空間を現地に反映するARアプリ

  3. torinome Planner - みんなでカードを動かして空間について議論するARカードゲームアプリ

torinome - Digital Twin + XR

4. これまでの取り組み

八王子市(2022年度~)

2022年度の最初の企画では、八王子市のご協力のもとで同市にある「北野下水処理場・清掃工場跡地活用」をテーマに、torinomeのプロトタイプ開発をしながら市民参加ワークショップを実施しました。

2022年度の八王子ワークショップ

初の取り組みではありましたが、当初の仮説だった3つの課題について、それぞれの成果を上げることが出来たと考えます。

市民参加型まちづくり3つの課題と結果

① 探せない、わからない (まちづくりに関する情報公開の課題)
・3D都市モデルとXRにより、見ればわかるように
・大量の情報を短時間に伝えることができた
・マクロとミクロ、様々な目線での情報提供と意見交換が実現した

② 参加者層が偏っている (参加者固定化、多様性欠如の課題)
・若年層参加者が増えて、参加者半数以上が30代未満に

③ 想像しづらい、残せない (難解さ、曖昧さの課題)
・XRによる具体的なビジュアルとスケール感で理解の齟齬が少ない
・参加者の視点や意見がデジタルツインに残る

市民参加型まちづくり3つの課題と結果

一方で、短期間で企画しながらプロトタイプを開発したこともあり、使い勝手や体験としても実験的な要素が強く、企画や準備、オペレーションも大変、などの課題も明らかになりました。

八王子市ではこのあと3年連続で取り組みをいただいており、3つのまちづくりプロジェクトでご利用をいただいています。

広島市・相生通りのトランジットパーク化構想(2023年度)

Project PLATEAUユースケース開発としての初年度が成功裏に終わって、発展的に継続をしようとの企画で臨んだのが2023年度でした。

テーマは、全国展開可能なプラットフォームにすること。2年目は全国展開を目指して日建設計様・日建設計総合研究所様と協力し、広島市都心部の道路空間再編をテーマにしたプロジェクトを実施しました。

広島・相生通りをいきいきした歩行空間に

八王子市北野では7.5ヘクタールという比較的大きな空間の利用を5~10年といった長い期間で検討をする話でしたが、広島市はウォーカブルなまちの実現をした上で歩行空間をどのように活用したら面白くなるか、といったスケールの異なるテーマでしたが、同じシステム使ったワークショップが企画開催出来、汎用的に活用が出来るようになりました。

加古川市・加古川駅前活性化(2024年度)

今年度も日建設計グループのご協力を得て、今度は加古川市におけるまちづくりに活用しています。

加古川市はスマートシティに力を入れており先進的な取り組みが多く、自治体の意思決定への市民参加を目指したオープンソースプラットフォームDecidim採用していたり、都市OSとも言われるデータ基盤FIWAREを導入していたり。

本年度は、このスマートシティプラットフォームのDecidim・FIWAREをtorinomeとシステム連携することで、それぞれワークショップ事前事後の市民・自治体間のコミュニケーション継続性の実現と、ワークショップで活用するデータの充実を狙います。

※日常の空間にまちづくりワークショップの結果が重畳表示されるAR

ワークショップの開催情報や参加者募集や、開催後の投票やコメントなどもDecidimに掲載されて、その後のコミュニケーションへと活用される予定です。

加古川市DecidimにPLATEAUデータが組み込まれた様子

5. 今後の展望

まちづくりをターゲットとして開発したtorinomeですが、デジタルツインとXRを接続して得られる体験は上記ご紹介した事例以外でも都市開発コンサルタントやゼネコンさんなどですでにご採用をいただいており、広く空間の可視化やそれに関連したコミュニケーションを円滑化ツールとしてご評価を頂いています。

また、日本のみならず海外での活用も期待をしています。

台湾は日本のPLATEAUと同様のデータフォーマットを採用したTaiwan 3D Map Serviceが公開されており、オープンデータとして配信されています。

国立台北科技大学・Chen先生の実施レポート

国立台北科技大学のチームが同データとtorinomeを使ったまちづくり市民参加ワークショップを企画開催して、現地でも大盛り上がりイベントが開催されました。

また、11月にスペイン・バルセロナで開催されたSmart City Expo World Congress 2024にも国土交通省Project PLATEAUチームの一員としてtorinomeを出展をしましたが、ブースを訪れるスマートシティ関係者からも大きな反響を得ました。

海外でProject PLATEAUのユースケース一例としてPR

torinimeが未来のまちづくりを実現します。

まちづくりの市民参加の分野において、国境を越える新しい価値をtorinomeが実現しつつあります。

この、デジタルツインとXRが繋ぐ新しいまちづくり。

まちづくりのプロの目線と、その街で暮らし、学び、働く、多種多様なステークホルダの相互の「WILL」を3Dで直感的に可視化をして、もっとずっと分かり合えるプラットフォームを目指して。

さてさて、ホロラボAdvent Callenderの次は、、、「製造業におけるXR」です!